最初で最後の愛の話
「……そんな場所が本当にあればいいな……」

愛の呟きに、僕は「きっとあるよ」と微笑んだ。

家に帰ってから、僕は早速小説をコンテストに応募した。愛の言葉と自分の小説を信じ、ココンテストの結果を待つ。

コンテストに応募して数ヶ月後、僕はコンテストで大賞を受賞し、小説家デビューが決定した。嬉しくて、すぐに愛に連絡する。

「本当!?おめでとう!!」

電話で賞を受賞したことを伝えると、愛はまるで自分のことのように喜んでくれた。そして、お祝いにと僕の大好物のハンバーグを作りに家に来てくれた。

本当に、愛と過ごす日々は幸せだ……。



そして、僕らは二十歳になり成人式を迎えることになった。僕はスーツを、愛は華やかな振袖を着ている。

愛の美しい姿を見て僕を始め多くの男性が見とれたが、ウェルナー症候群をよく知る愛や僕は知っている。

これから先、愛の体はここにいる誰よりも早く歳を取っていく。今まで同じだった時間は急に変わってしまうということを……。
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