梅咲君にはツノがある ~私、節王様と結婚します!~
 私はここのところカレカノということだけで舞い上がっていたし、反面、女子たちからの地味な嫌がらせなんかにも遭っていて、梅咲君の仮の環境について、完全にノーマークだった。

 向こうの世界では王子様でも、私と同じ公立中学に通うくらいだから特筆すべき家庭でもないとタカを括っていたというのもある。ところがだ。

「それにあの有名な宇目崎財閥の御曹司様とうちの朋香じゃ、どうしたって不釣り合いで、お互いに苦労が多いんじゃ……」

「ご心配はごもっともです。けれど、こちらは朋香さんの望む環境を整え、苦労のくの字もないよう努めますので、どうかご安心ください」

「逆にそこまでうちの子がしてもらう理由も見当たらなくてですね、庶民の私たちとしてはどうも……」

 梅咲君は旧財閥、宇目崎家の一人息子として暮らしており、小さいころ、こちらの世界の空気の馴染めず病弱だったため、『門』の近くにある小学校に転校してきたというのがそもそもだったのだ。

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