私を壊した君へ。
「「さすが梨奈」」

よく聞くセリフ。
みんなが私を頼るの。
別にそのことに優越感だとか、当然でしょ?なんて感情はない。
むしろ世話焼きな私は、お決まりのそのセリフを聞くと嬉しくなって、さらに世話を焼きたくなる。
所謂「姉御」なんて立場だった。
それが本当の自分、みんなも自分もよく知ってる私。
そのスタンスで20年生きてきたの。

◻︎◼︎◻︎

私は20歳で短大を卒業して新卒で就職した。
初めての土地、
初めての人間、
初めての生活、
なにもかも洗い立ての真っ白なシーツみたいに新鮮だった。
鼻から吸う少し冷たい空気もスーッと通って肺まで届く。
自分も新品になったかのような気分だった。
今までの私じゃ起きれないような時間に目が覚めて、時間に余裕を持たせてゆっくりと支度する。
社会人1年目。2年目になる頃には良い1年だったと笑顔でいれるだろうか。
そんなことを考えつつ私は会社に向かった。

◻︎◼︎◻︎

新しい環境に身を置く自分に酔いしれていたらあっという間に入社式が終わり、同期同士の自己紹介の場面になっていた。
同期は全員で20人。
思っていたよりも多くて、学校のクラスのような雰囲気が出ていた。
おかげで少しは緊張が和らいだ。

「如月なつめです!歳は22、大学に通ってました!
好きなものは布団と空手と買い物です。じゃんじゃん飲み会にも誘ってください、お願いしまーす!」

なつめはショートカットで笑顔が絶えないような印象の子だった。
背が高いからか、スーツをスラッと着こなしてていかにもできる!キャリアウーマン!という雰囲気が出てた。
やっぱ大学卒業した子が多いなぁ。
年上だけど同期。こういう場合ってタメ語…?

「えー田中蒼です。歳は22でー同じく大学生でした。好きなものは酒ですね。あ、あと漫画も読むんで漫画好きいたら話しかけてください。よろしくお願いします〜」

少しイントネーションが標準語と違う男の同期だった。どこか地方出身なのかな?
身長標準男性程度、少し猫背気味のせいか陰キャとも取れそうだけど話し方とか雰囲気的に陽キャっぽい感じもする。
おそらく男友達も女友達もそこそこいるけど友達として仲良くなりすぎて恋愛まで発展しない良いやつ、ってとこかな?

こんな具合で勝手に人を吟味していき、これから関われそうな人を見定めていた。
見定めるなんて、人を選ぶなとたまに批判的な声も聞こえることがある。
でも自分の人間関係は自分のものだから、他人にどうこう言われる筋合いはない。
誰だって、気が合う人と仲良くしてたいでしょ?

そんなことしてたら自分の番がきた。

「月島梨奈です。20歳で短大卒業です。好きなものは家に引きこもることと読書や映画鑑賞です」

当たり障りのない普通の自己紹介。
実を言うと、自分から人にアプローチするの苦手なんだよね…。
そのあとも滞りなく自己紹介は順々に回っていき、初日は何事もなく終わった。


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