Lose everything
10

あれから一年を過ぎた。

陽真は、地元の地におりた。
妹の千紗の結婚式に。

千紗は、俺が来てくれるはずない
と思っていたらしいが・・・

義母に出席して
貰えないかと頼まれた。

俺は、千紗の事を恨んではいない
千紗も十分に苦しんだと思うし
俺にあれだけの扱いをされて
俺の方が、来て欲しくないと
思われているだろうと
思っていた。

もちろん、父親も義母も
俺と千紗に身体の関係があるのは
知らない。たぶん義母も・・・。

悩んでいたら、父親から
「たまには、母親の願いを聞いてやれ。」
と、言われて決めた。

あの時、俺が苦しかったときに
父親もだが、義母は、涙を流し
共に悲しんでくれて
俺のために考えてくれた。
もちろん、恩返しを
俺もしたかった・・・

式にでると
千紗は、涙を流して喜んでくれた。

千紗の旦那となった男は
千紗とよくつるんでいて
俺の事も相談されていた奴だった。

まぁ、複雑だったとは
思うが、俺が出席したことを
喜んでくれて
「お義兄さん、
わざわざありがとうございます。」
と、言ってくれた。
「千紗の事を、妹の事を
宜しくお願いします。」
と、俺は頭を下げ
「千紗、幸せなれよ。」
と、言うと
「‥‥‥はる‥‥お‥‥にい‥‥ちゃん‥‥
   ‥‥‥ありが‥‥とう‥‥‥」

式に出席して、良かったと思った。

千紗のウェディングドレス姿
綺麗だった。


その夜は、実家に泊まり
父と義母と一緒に飲み
ゆっくりと食事をとった。

父も義母も
俺の事を心配していたが
「心配ばかりかけてごめん。
情けないと思われているかも
知れないが。
俺の中から消えていかないんだ。
俺は申し訳ないが
ずっと独身かもしれない。
結婚に縁がないかも知れない。」
と、言うと
父も義母も
「陽真の思うように生きていけばよい。」
と、言ってくれた。

二人の優しさが身に染みた。

今の俺には、仕事を頑張って
あの時、俺のために動いてくれた
人達に少しでも貢献出来たら
と、ずっと思ってきた。

父も義母も、
「もう少し
ゆっくりして戻ったら。」
と言ってくれたが

こっちにいて
見たくない物を見たりするのは
まだ、たえれない。
親父達には、言えなかったが
「仕事ある。」
と、言うと親父は苦笑いをしていた。

もし・・・
桜子さんが
他の男性といたり
秀一さんと一緒だとしても・・
情けない男だと思う

桜子さんには、
幸せになって欲しいと
思っているのに。
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