33歳の初恋【佳作受賞】
 披露宴が終わり、会場を出ると、夕凪先生を待つ子供たちの姿があった。

その後ろに、木村先生。


ああ…
やっぱり、好きだなぁ…
一生、報われなくても。


子供たちが、夕凪先生に群がるのを眺めていると、木村先生が隣にやってきた。

「松井先生、
いろいろとありがとうございました」

「いえ、こちらこそ」

これが最後の会話。
私は、こぼれそうになる涙を堪えて、微笑んで見せた。

「松井先生、来週の週末は空いてますか?」

「え?」

「2人で打ち上げしましょう」

まだ…
会えるの?

「はい」


期待しちゃいけない。
これはただの打ち上げのお誘い。
こんな素敵な人が、私なんかを相手にするわけがない。

私は、必死に自分に言い聞かせる。


「良かった。
実は、もうチケット買っちゃったん
ですよね」

え?

「名曲喫茶しらべって所で、ピアノと
バイオリンのコンサートがあるんです。
クラッシックからポップスまで幅広く
演奏してくださるそうですよ」

なん…で?

打ち上げって、いつもの居酒屋じゃないの?

それじゃまるで…
デートみたいじゃない。

「来週は、ご自宅まで迎えに行きますね」

え?







私が出会ったのは、初恋の人?



それとも………





………………運命の人?



─── Fin. ───
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