逆転結婚~ブサイクだって結婚したい~

 翌日。
 
 朝、忍が目を覚ました時、樹利亜はいなかった。

 仕事には行くなと言ってあるのに、どこに行ったのだろう?
 もう起きているのか? 


 そんな事を思いながら忍はリビングに向かった。


 リビングでは希歩が朝食の準備をしていて、食卓で優輝が新聞を読んでいた。


「おはよう…あれ? 樹利亜は? 」


「おはよう忍。樹利亜ちゃん、どうかしたの? 朝からまだ見てないわよ」

 希歩が言った。

「え? 部屋にもいなかったけど」

「仕事に行ったんじゃないのか? 」


 新聞を置いて、優輝が言った。


「いや、もう仕事には行かないように昨日話したんだけど」


 言いながら、忍はもう一度寝室へ戻ってみた。




 寝室を見渡すと、枕元に携帯電話が置いてあった。


 手に取ると、それは樹利亜の携帯だった。


 着信のランプがついている。


「携帯置いている…どうして? 」


 何となく嫌な予感がして、忍は樹利亜の携帯を開いてみた。


 すると…

 そこには作成したメールが表示されていた。



 そのメールを見ると、忍は真っ青になった。


(忍さん。こんな私を愛していると言ってくれて、本当に有難うございました。嬉しくて涙が止まりません。こんな私に優しくしてくれて、忍さんと繋がれて本当に嬉しくて何も思い残すことはありません。私も心から愛せる人に出会えて、信じられないくらい幸せです。だから、もう忍さんとはお別れします。これ以上、巻き込みたくありません。忍さんはまだ若くて素敵な人だから。もっと素敵な人と出会えます。…忍さんの幸せを心から祈っています。離婚届け、記入したら送ります。…幸せを有難うございました…樹利亜)

 
 樹利亜からの別れのメールだった。

 探されないように、自分の携帯で作成して置いて行くとは…。


「…何を言い出すんだ。…」

 忍は込みあがる思いをグッとこらえた。


「必ず見つけ出すから…。お前以上の女なんかいない…」

 樹利亜の携帯を握りしめて、忍はじっと一点を見つめた。

 
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