逆転結婚~ブサイクだって結婚したい~

「ひ、人違いです…失礼します」


 ブサイクな女性が去って行こうとした時、忍は女性の手を掴んだ。


「待って下さい! 」

 引き止められ、ブサイクな女性はちょっと困った顔をした。


「人違いじゃないですよ。その声は、間違いありません」


「ご、ごめんなさい。私…ダメですから…」

「え? ダメって? 」

「む、無理です! こんな私と…。すみません、本当に来てくれるなんて思っていなかったので…」


「何を言っているのですか? 本気ですよ、俺は」

「はぁ? 」

 
 忍は辺りをチラッと見た。

 通り行く人が、何事かと見てゆく姿が目に入った。


「ここじゃ何だから、場所を変えましょう。樹利亜さん」


 名前を呼ばれると、ブサイクな女性は観念したように俯いた。







 
 シティーホテル1階カフェ。

 ここはちょっとオシャレなカフェで、個室になっている。

 お見合いも良く行われるカフェで、いつも静かなクラッシックが流れていてとても落ち着く場所である。




 忍は樹利亜をこのカフェに連れてきた。



 個室でもテーブル席で、座り心地が良い椅子である。


 椅子を引いて、樹利亜を座らせると、忍は向かい側に座った。


「改めまして。宗田忍です。よろしくお願いします」


 樹利亜は俯き加減で、こくりと頷いた。


「珈琲は飲めますか? 」

「はい…」

「じゃあ、このお店のおススメの珈琲注文しますね」



 忍は手際よく珈琲を注文してくれた。


「無事に、お会いできて良かったです。お電話、とても嬉しかったです」


 
 忍の声はとても優しくて、樹利亜は罪悪感が込み上がってきて申し訳ない気持ちでいっぱいになった。


「早速ですが、これにサインして頂けますか? 」


 そう言って、忍がテーブルに広げたのは婚姻届けだった。


 それを見た樹利亜は驚いて目を疑った。
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