逆転結婚~ブサイクだって結婚したい~

 忍はそっと樹利亜を見つめた。


 涙がいっぱいの忍の目は、ちょっと赤かった。

 樹利亜の目も涙で溢れていた。



「樹利亜。俺の運命の人は、樹利亜だから」

「運命の人? 私が? 」

「ああ、だって俺…。今まで、どんな女性が言い寄ってきても。反応しなかったんだ」

「え? 」


 驚いている樹利亜に、忍はちょっと赤くなった。


「だからさ…。俺は、運命の人にしか起たないんだ」

「え?! 」


「今まで、付き合った人にも起たなかったし何も反応しなかった。だから、樹利亜の電話を受けた時、初めて反応してびっくりしたんだ」


 信じられない顔をしている樹利亜。

 忍はそんな樹利亜の額をツンと突いた。


「樹利亜を抱く時だって、ちょっと心配だったんだ。起たなかったらどうしようって、でもさ…ちゃんとできただろう? 」

「はい…」


 赤くなって俯く樹利亜。


「もう、別れるなんて言うな。心臓止まりそうだったから」

「…ごめんなさい…」


「これも、いらないだろう? 」


 そう言って、忍は人工中絶の用紙を破り捨てた。



 胸がいっぱいになって、樹利亜は何も言えなくなった。


「帰って来てくれるか? 樹利亜。ここから、もう一度やり直してくれるか? 」


 そう尋ねられると、樹利亜はそっと頷いた。


「…良かった。…やっと、生き返った気持ちだよ。心臓が止まりそうだった」

「ごめんなさい…」

「もういい、無事でよかった。…」


 そっと体を離して、忍は自分の着ていた上着を樹利亜に着せた。

 樹利亜はセーターは着ていても、上着を羽織っていなかった。

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