【完】ねぇ、もっと俺に甘えてよ?


瞬きすら出来ずに八雲先生を見つめる私に、口を開いた。



「晴花もこの学校に入学したばかりだった。 あの日も、元気に家を出て行ったのに……“お兄ちゃんただいま”って、もう二度と聞くことはなかった。嘘だろ、そんなの……」



苦しそうに吐き出された八雲先生の声。


息も出来ないくらい、苦しい声。



「どう痛めつけてやろうかずっと考えてた。お前が苦しんでいる姿を、あの男が見たらどう思うだろうって……」



きっと、ずっとそうやって生きてきたのだろう。


憎むことでしか、自分を保てないほどに。



「────“私の父親は人殺しです”って、認めろよ。ごめんなさいって頭つけて謝ってよ?」



八雲先生は私を苦しめることでお父さんへ復讐心を晴らしたいのかもしれない。

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