【女の事件】十三日の金曜日
第31話
高松市新田町の救急病院で発生したギロチン殺人事件について、香川県警の捜査1課は殺人事件で捜査をしているものの、容疑者に結び付く確固とした証拠が見当たらないので、捜査が行き詰まっていた。

その一方で、ギロチンを盗まれてしまった石材店は、事件の影響で営業を続けて行くことができなくなったので廃業を余儀なくされた。

10月13日に発生したギロチン殺人事件による影響は、ゆかこの一家にも及んでいた。

10月14日の朝7時頃のことであった。

ところ変わって、ゆかこの一家が暮らしている円座町のマンションの一室にて…

テーブルの上には、ゆかこが作った朝ごはんが置かれていた。

白ごはん、白味噌のおつゆ、アジの開き、たくあん、野菜の煮物がテーブルの上に並べられている。

この時、ゆかこの兄のひろかずがおはしを叩きつけるように置いた後、黒のアディダスのリュックを持って立った後、出勤しようとしていたので、母親が心配そうな声でひろかずに呼び掛けた。

「ひろかず、ごはん食べんの?」
「食べん!!」
「ひろかず…ごはんたくさん残しているわよ。ごはんもおつゆもぜんぜん食べていないわよ。」
「電車に乗り遅れるから出るのだよ!!」
「おかーさんが工場に電話をしてあげるから…」
「そななことして、何がしたいんぞ!?」
「何がしたいって…朝ごはん食べないとお腹がすくから…」
「やかましい!!オラゆかこオドレ!!」
「どうしてゆかこに強烈な声でおらぶ(怒鳴る)のよぉ…」
「ゆかこがオレをグロウしたけん怒鳴りつけたのだよ!!」
「ひろかず。」
「やかましい!!」

ひろかずは、アディダスのリュックを持って、ドアをバターンとしめて出掛けた。

母親は、あつかましい声で父親に言うた。

「困ったわねぇ…もうどうしてうちは家族が仲よく暮らして行くことがでけん(できない)のかしら…あなた…あなた!!」
「なんなのだよぉ…」
「あなたね!!キョトンとした表情でボーっとしている場合じゃないのよ!!分かっとんやったら、ひろかずの今後の人生設計のことについて逃げずに向き合いなさいよ!!」
「おい、あんまり怒らんといてーな…オレ、しんどいのだよぉ…」
「怒りたくもなるわよ!!あんたがのみうつかうの遊びざんまいをしていたことが原因で家の貯金がコカツしたけん、ひろかずが高校に行けなくなったのよ!!わかっとんかしらロクデナシ!!」
「あんまり怒らんといてーな…」
「ゆかこはどうにか短大まで行くことができたのは、姉さんの3人のきょうだいの学資保険を解約した分で行ったのよ!!ひろかずが高校に行くことがでけん原因を作っておいて、ヘラヘラヘラヘラヘラヘラヘラヘラヘラヘラヘラヘラヘラヘラヘラヘラヘラヘラヘラヘラヘラヘラ…ロクデナシ!!コカツ魔!!安月給魔!!」

母親は、コマクが破れる手前まで父親に怒鳴り付けたあと、手当たり次第に物を投げつけていた。

父親は、母親から暴力をふるわれていても反撃することなく、殴られっぱなしになっていた。

ゆかこは、無愛想な表情でバイトに出掛けた。

ゆかこは、結婚をあきらめて女ひとりで生きて行くことを訣意して、ファミマでバイトをしていたが、仕事が思うようにうまく行かずに、気持ちがイライラとしていた。

ひろかずは、円座町から志度のタダノの工場までことでんの電車を乗り継いで遠距離通勤を続けていることにジレンマを感じていたので、仕事が思うようにうまくいってなかった。

そうした気だるい気持ちが原因で、ゆかことひろかずは深刻なトラブルを引き起こしてしまった。
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