【女の事件】十三日の金曜日
第34話
ゆかこの父親は、義姉(まさのりの母親)が知人の弁護士さんを立てて、ケーサツにシャクホウの交渉とパチンコ店との示談交渉をへて問題が解決したあと、シャクホウされた。

ゆかこの父親は、夜10時過ぎに義姉に付き添われて円座町のマンションに帰宅をした。

マンションの一室にて…

居間にはゆかこの両親と義姉がいて、今後どのようにして行きたいのかを話し合っていたが、義姉は怒り心頭になっていたので話し合いがこじれてしまった。

ゆかこの母親が、泣きそうな声で父親に言っていた。

「あなた!!もうええかげんにしてよね!!義姉さんがどうして激怒しているのかが分かってへんみたいね!!」
「分かっているよぉ…」
「分かってはるのだったら、姉さんにあやまんなさいよ!!」
「あやまるよぉ…ごめんなさい…あやまったよ…」

義姉は、ゆかこの父親のあやまりかたを聞いて、ますます怒り狂ってしまった。

「んまあ!!なんなのですかそのあやまりかたは!!ごめんなさいあやまったよって…人に対してそんな物の言い方しかでけんみたいね!!」
「あなた!!」
「それじゃあ、どーしろと言うねん…」

ゆかこの母親は、父親の言葉を聞いてより強烈な声で怒った。

「あなたね!!ひろかずがどんな想いをして遠距離通勤をしているのかがゼンゼン分かってへんみたいね!!」

義姉は、ゆかこの父親は悪いことをしてもあやまらない…いえ、心の底からあやまろうと言う姿勢が見られないので許さないことを訣めた(きめた)。

同じ頃であったが、十川西町にある鉄工所で窃盗事件が発生していたので、事件現場が緊迫していた。

ケーサツが現場検証をしていた時に、倉庫の中に保管されていたギロチンが盗まれていた。

二日前に新田町の救急病院で発生したギロチン殺人事件の時に使われたのと同型のギロチンであった。

県警は、盗まれたギロチンの発見に全力をあげることになったが、そんな中で恐ろしい悲劇が発生したのであった。

そのまた次の日の朝7時頃のことであった。

前夜に十川西町にある鉄工所の倉庫から盗まれたギロチンの写真がテレビの朝のワイドニュース番組の中で公開されていた。

男性ニュースキャスターが、ものすごく怒った声で『写真のギロチンを発見しましたら一刻も早く警察に知らせてください!!』と呼びかけていた。

続いてのニュースは、カリスマモデルさんが一流企業のオンゾウシの男性と入籍をしたと言うニュースが報じられていたので、ひろかずはテレビの電源を『ブチッ!!』と切ってしまった。

その後、食べかけの朝ごはんを残して、リュックサックを持って部屋を出ようとしていたので、母親がものすごく心配そうな表情でひろかずに言うた。

「ひろかず…ひろかず…」
「なんや!!」
「ひろかず…どうしてテレビの電源をブチッと切ってしまうのよぉ…」
「切りたくもなるわ!!」
「おかーさん、テレビ見たいのよ…テレビつけてよぉ…」
「やかましいオドレ!!」

ひろかずは、つくだ煮が入っている小皿を母親に投げつけてイカクしたので、母親は『どうしてアタシがイカクされないといけないのよぉ…』と言う表情でひろかずに言うた。

「ひろかず…ひろかず…」
「なんや!!」
「ひろかず…どうして怒っているのよぉ…」
「そななことを聞いてどないしたいんや!?」
「ひろかずがどんな不満があるのかを聞いてあげたい…」
「そんなん聞いてどないしたいんや!?」
「どないしたいんやって…ひろかずの不満を聞いたら、おかーさんが解決できる方法を教えてあげるから…」
「やかましいオドレ!!オドレはオレが抱えている不満をどのようにして行きたいのかを言えや!!」
「どのようにして行きたいのかって…ひろかずが抱えている不満を解決してあげたいから話を聞いてあげるというているのよ。」
「やかましい!!オドレふざけるな!!」

(バターン!!)

ひろかずはドアをバターンとしめた後、リュックサックを持って、円座駅へ向かって歩いて行った。

ところ変わって、マンションの駐車場にて…

マンションの駐車場に駐車している白のニッサンエルグランドに、3軒となりの家の息子さんが婚約者のカノジョと出勤前にイチャイチャしているところを見たひろかずは、表情をしかめていた。

息子さんは、ひろかずにやさしく声をかけていた。

「ひろかずさん…おはよう…」
「なんや!?今オレになんて言うたんや!?」
「ひろかずさん…ぼくはおはようと言っただけなのだよ…」
「やかましいオドレ!!朝の通勤時間帯にイチャイチャイチャイチャイチャイチャするんじゃねえよ!!さっきオレのことを『結婚できん人はかわいそうだな…うらやましいだろ…』と言うてニヤニヤ嗤って(わらって)オレをグロウした!!」
「グロウしていないよ…」
「ふざけるな!!オレは結婚相手に出会える機会がないからみじめだなぁと言うた!!」
「言っていないよぉ…」
「やかましいオドレ!!オレが電車を乗り継いで通勤していることをグロウするだけグロウしたのだからもうこらえへんけん!!」
「グロウしていないよぉ…電車通勤がしんどいのだったら一緒に乗せてあげるから…」
「やかましいオドレ!!オレの前でイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャしてオレをグロウしておいてあやまらんのか!!オラあやまれ!!ワーーーーーーーーッ!!」

ひろかずは、息子さんに大声でワーーーーーーーーッと叫んでイカクした後、あかんべーをして走り去って行った。

そんな中であった。

家の食卓では、母親が父親とゆかこに八つ当たりをしていた。

「ゆかこ!!」
「何なのよぉ…」
「何なのよじゃないでしょ!!」
「おかーさん…アタシしんどいのよぉ…」
「ゆかこ!!あんたはお兄ちゃんがどんな想いをしているのかがゼンゼン分かってへんみたいね!!」
「アタシがお兄ちゃんに何をしたと言いたいのよぉ…」
「言いたくもなるわよ!!お兄ちゃんはね!!あんたのワガママのために何もかもをガマンしてタダノの工場で働いていると言うのに、お兄ちゃんのつらい気持ちなんかどーでもいいというわけなのね!!」
「おかーさん…」
「ゆかこ!!ゆかこはおとーさんのようなドロボーになりたいのね!!」
「そんなことは言っていないわよ…」
「いいわけばかりを言わないで!!ゆかこ!!ゆかこは当分の間ハローワークと家の往復の暮らし以外は禁止です!!分かっているのだったら返事しなさい!!ハローワークへ行って、面接の申し込みをして採用をもらってきなさい!!」

ゆかこは、母親の言葉に対して『返事したわよはい!!』と怒った声で言うたので、母親はカチンとした表情になっていた。

父親は、母親がこわいので『ハローワークへ行く…』と言うてシューカツをしていた。

しかし、どんなにがんばっても採用がもらえない状態が続いていたので、ゆかこと父親は次第に気持ちがイシュクしてしまった。

履歴書を作って、アピールするポイントを一生懸命になってアピールしているのに採用がもらえない…

家とハローワークの往復だけの暮らしで通しているので、つらい…

そうしたイライラは、ひろかずにも波及していた。

毎朝毎朝、ひろかずは3軒となりの家の息子さんが婚約者のカノジョとイチャイチャしている場面を見ているだけでもイライラして八つ当たりすることを繰り返していたので、近所のみなさまはひろかずの両親はひろかずの結婚問題から逃げてばかりいると決めつけてヒソヒソと話すようになっていた。

それから2日後のことであった。

3軒となりの家の奥さまが心配になって、ひろかずの母親に声をかけた。

3軒となりの家の奥さまは、ひろかずが毎朝大声で叫んでいることを聞いていたので、母親にこれからどうしたいのかを聞いて見た。

「上尾さん、ひろかずさんがこの頃毎朝毎朝大声で叫んで暴れているみたいだけど、一体何が原因でああなったのかな?」
「何が原因って…」
「ひろかずさん、息子にばかり八つ当たりを繰り返しているけど…息子は何の落ち度もないのよ…」
「そんな事はよく分かっています!!ですが、ひろかずは息子さんにグロウされたと言うているのです…毎朝毎朝イチャイチャしている場面を見るのがイヤなんだよ…息子さんがひろかずに『結婚できん人はかわいそうだなぁ…』と言うてニヤニヤ嗤って(わらって)いたと言うていたわよ!!」
「息子はそんな事は一言も言うていないけど…ようは、ひろかずさんは結婚相手に出会える機会がないと言うことが原因と言うわけよね。」
「奥さん…ひろかずは39歳なのですよ!!39歳で初婚は難しいのです!!」
「上尾さん…」
「奥さん!!ひろかずは中卒後に契約社員で安いお給料で働いているのよ!!ゆかこのワガママのために犠牲になって…何もかも何もかも何もかも何もかも…何もかもガマンして働いてきたのよ!!ガマンしてガマンしてガマンしてガマンしてガマンしてガマンしてガマンしてガマンして…ガマンして中卒で契約社員でがんばって働いてきた…けれど、どんなにがんばってもお給料は7万円なのよ!!7万円のお給料でどーやってお嫁さんを養うのですか!?」
「どうやってって…」
「息子さんは、高校の時から付き合っているカノジョと婚約できた…だけどね…ひろかずは今から結婚したいと言うてもできんのよ!!結婚相手がいないのにどーやって結婚をするのですか!?」
「上尾さん…」
「奥さん!!方法があるのだったら言ってみなさいよ!!結婚相手がいない状態で結婚する方法があるのだったら言うてみなさいよ!!」
「あるわよ…ひろかずさんがお嫁さんほしいと言うのだったら、アタシが頼んであげようか?」
「頼んであげようかって…どこに頼むのよ!!夢みたいなことばかりを言わないでちょうだい!!ひろかずは今から結婚したいと言うても遅いのよ!!ムリなものはムリ!!できんもんはできんのよ!!」

母親があれもダメ、これもダメばかりを言っていたので、奥さまは『何を言うてもアカンみたいね…』と言うてあきらめた。

ひろかずのイライラが日増しに高まっていたので、家族間の人間関係に生じた亀裂が少しずつ大きくなっていた。

そして、亀裂が大きくなって行くのと同時に取り返しのつかない悲劇が発生したのであった。
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