愛プチ
「とりあえずシャワー浴びてくれば?」
こっちをみずに美月君が玄関のドアを開け、中に入る。

「でも、美月君もびしょびしょじゃないですか、、。先入って下さい。」

「めんどくせえな。じゃあ一緒に入るか。」

「いえお先に入らせていただきます。」
会話が平行線になると感じた美月君なりの優しさだろうが、さっきのハグのせいでそんな冗談も少しばかり心臓に悪い。

帰り道一通り泣いたせいか、とりあえずは落ち着いた。
ケータイをみる心の余裕はまだない。

美月君が風邪をひかないように爆速でシャワーを浴びて浴室を出ると目の前に半裸の美月君がいた。

何故!?!
まさか冗談じゃなくて本気で一緒に入る気だったの!?

まさかさっきのハグといい私のこと狙ってるんじゃ、、。

「なんでお前今日に限ってこんな早えんだよ!!!!
ふざけんな!!!」
慌ててタオルを持ち去る彼の後ろ姿をみてホッと胸を撫で下ろす。
いつもよりかなり急いでシャワーを浴びたせいで鉢合わせてしまっただけで他意はないらしい。

なんだタオル取りにきただけで気のせいか。
そりゃそうだ。
こっちも裸ちょっと見られたけどこれ逆セクハラとかになんないよね?
大丈夫だよね??

しかし女の子の裸なんか見慣れてるだろうにあの慌てっぷり・・・。
一応同居人として気を使ってくれはじめてるんだろうか。
なんだか反抗期の弟ができたみたいで少し微笑ましい。

体を拭いてリビングに行くと、美月君が、暖かいホットミルクを約束どおり入れてくれていた。


「ありがとうございます。そして色々すみませんでした。
お風呂どうぞ。」
ぺこりと力なく下げた頭を、通り過ぎざまに美月君がぽんぽんと優しく撫でてくる。

そして何も言わずにシャワーを浴びに行った。

テーブルに置かれたホットミルクを飲むとまたその温かさにじわりと視界がにじむ。

「あったかい。」
この家に戻ってきて良かったと初めて思えた瞬間だった。
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