キミは当て馬、わたしはモブ。


 だけど、頭の中では彼のことがちらついていた。



『佐久良は……』


『俺の……』



 あれは、なんて言おうとしてたんだろう。


 友達じゃないなら、なんだっていうの。



「和花ちゃん? どしたの、ぼーっとして」


「……あ、ごっ、ごめん」



 ダメだ、アカネちゃんといるのに考えごとなんて。


 軽く頭を振って気持ちを切り替える。


 切り替え……られない。



「あの……アカネちゃん」


「ん?」


「アカネちゃんにとって中村くんって……なんなの、かな」



 二人がお互いのことを大切に思ってるのは見てわかる。それで好きになったんだから。


 でも、恋愛感情があるかといえば、微妙な感じだ。


 大切だけど、恋と呼べない気持ちって、なんて表せばいいんだろう。



「……。えーと、幼なじみ?」


「それだけ?」


「……幼なじみで、友達で……家族みたいな……」



 いくつか言葉を並べると、アカネちゃんは小さく微笑んだ。



「――本当はあんまりこうやって、はっきり名前を付けるべきじゃないのかも」


「……なんで?」


「たぶん優斗は、あたしのこと本当にただの幼なじみとしか思ってないんだけど」



 そして、肩にかけていたカバンをぎゅっと握る。



「あたしは……それだけじゃないかもなぁって思い始めてるから……」


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