キミは当て馬、わたしはモブ。


 玄関で帝塚くんを見送る。駅まで送るって言ったら、もう遅いからって断られたから。


 学校は、また明日。遊びに行くのは、また今度。


 なんか……いいな、そういうの。



「じゃあ帝塚くん、また――」


「佐久良」



 挨拶をして手を振ろうと上げたところを掴まれた。


 そのまま、両手で包まれて。



「……」



 何も言わない。



「……なに?」


「なんでしょうかね」



 まったく、こっちが聞いてるっていうのに。


 別に嫌じゃないから振りほどかないけど。


 そういうの、無駄にドキドキしちゃうんだからね。



 ――――わたし達の道は、まだ行き止まりじゃない。


 乙女ゲーム、仕方ないからやらせてあげる。


 デート、いっぱいしたい。


 キスとか、もうちょっと慣れていきたい。


 選択肢も、たくさん提示してあげるから。


 だから続きは、また今度ね。



 わたしだけのヒーローを見上げると、いつものように目を伏せて笑っていた。


 わたしも、思わずつられて顔が綻んだ。




おわり.

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