キミは当て馬、わたしはモブ。



「違うからな! あれは別に、後学のためにちょっと見てみただけで!」


「こうがく? よくわかんないけど、あたしはなんにも知らないってば」


「くそぉ……」



 しらを切るあたしと、バツの悪そうな優斗。並んで登校する、いつもの風景。


 そんなに焦るってことは、やっぱりほんとに願望があるってことなのかな……。


 優斗の負担になりたくない。


 でも、まだまだ一緒にいたい。


 矛盾してるのはわかってるからこそ、自分の気持ちの収まりどころに迷ってしまっていた。


 早く、起きられるようにならなきゃ……。



「あのさ、アカネ。なんかあった?」


「……えっ?」



 ぶっきらぼうな優斗の声に、下を向きかけていた顔を止める。


 声色とは裏腹に表情が優しかったから、ビックリしたまま固まってしまう。



「な、なんかって?」


「いや、違うならいいんだけど。最近様子おかしくない?」



 な、なんで。


 なんで気付いてくれるの……?


 胸がきゅうっと締め付けられて、苦しさに手で押さえる。


 なに、これ。



「え!? ちょっ、だ、大丈夫か!?」



 優斗が体を支えて、背中をさすってくれた。


 体中が沸騰したみたいに熱い。特に顔が今までに感じたことのない熱で暴れていた。



「あ、うぅ、っ」


「熱い……アカネ、やっぱり体調悪いんだろ。今日は休むか?」


「そ、そじゃなくっ、て」



 これは、どう考えても……!

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