嘘つきとカゲ。
*Prologue*


"それ"に気付いたのは、僕がまだ小学校低学年の頃だった。


『ねぇ、じいちゃん』

僕は家族の誰もが認めるおじいちゃん子で、いつでもどこにでも、『じいちゃん、じいちゃん』と言ってはついて回った。


『どうした、今日はやけに機嫌が良いじゃないか』

じいちゃんは皺のたくさん入った顔をくしゃあっとさせて、僕の大好きな優しい笑顔をさせてから、僕の頭をぽんぽんとたたいた。


『えへへー、じいちゃん聞いてっ。僕ね、学校のかけっこで一番だったんだ』

僕はもっとじいちゃんに誉めて欲しくて、撫でて欲しくて、じいちゃんにぎゅうっと抱き付いた。

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