会長様の秘蜜な溺愛

▼ヒミツな自覚





「暑いなぁ…」



6月も中旬にさしかかった。

次の授業のため、教科書を机に置きながらこぼした独り言には、いつにも増して覇気が無かったと思う。


ついに長袖から半袖の制服が主になり

普段窓側の席で授業を受けるわたしの脳内では、涼しい風が来る利点となびくカーテンが当たり続ける盲点がどちらも譲らなかった。


…カーテンをしてなかったら直射日光地獄にやられる。それだけは本当に勘弁してほしい。

…でも授業中カーテンが当たってくすぐったいんだよなぁ。顔に当たった時なんてもう何も言えない。


「菜穂、行こ」

「うんっ」


暑いのが得意ではないわたしは、これからもっと暑くなる何よりもの事実に、そっと身震いをした。



時間が経つにつれ、会長とのヒミツを共有する毎日に慣れてきてしまった自分がいる。

呼び出しは昼休みが多いけど放課後もあって

恐ろしいことに10分休みだったり、かと思えば一日中なかったり。


そのたびに麗ちゃんたちには先生に呼ばれたとか図書委員会の打ち合わせとか、脆い偽りを告げているけれど、そろそろ不審に思われても仕方がないと思う。



「今日何だっけ、濃度がどうのってやつ?」

「今日はね、水溶液使って何かするって言ってたよ」

「…あら。暑さで頭やられたわ」

「ふふっ、本当に暑いよねぇ」



それでも

連絡が来れば必ず足をすすめてしまうわたしの

会いたいと思ってしまうわたしの心の真ん中には、決まって彼が在る。

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