ホームズの子孫に嘘はつけない
「タオル、冷やしてくるね」

ワトソン先生はそう言い、私のおでこに乗せられたタオルを手にする。

「お願いします」

そう私が微笑むと、ワトソン先生は私の頭を撫でて部屋を出て行く。すると、「ホームズ、帰ってきたの?」という声が聞こえてきた。

ホームズさんは、朝早くにレストレード警部に捜査協力を依頼されてサリー州に行っていた。また殺人事件があったみたい。

ワトソン先生も、普段はホームズさんと一緒に事件現場に行く。でも今日は私を看病するためにロンドンに残ってくれていた。

「和香、具合はどうだ?」

ガチャリと私の寝室のドアが開き、ホームズさんが入って来る。その顔はとても心配そうだ。私が体を起こそうとすると、「いや、寝たままでいい」とホームズさんは私の枕元に置かれた椅子に腰掛ける。

「昨日よりは楽になりました」

「昨日は三十九度近かったな。レストレードとグレッグソンも心配していた」

「そうなんですか?すみません……」
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