その人は俺の・・・

(メロディー)

「いらっしゃいませ」

「…どうも」

吸い寄せられるように真っ直ぐ陳列棚に向かった。はあ、コーヒー…、ブラックか?微糖か?何が好みなんだ。どうせなんだから聞いときゃ良かったか。しかし、漠然と……探すとなると種類は多いもんだな。各種2、3本買っときゃなんとかなるか。あー、ホットでいいよな普通。わざわざ冷たいのが言いとか言わないよな。でもあの人なら言いそうかも。遠慮無さげだもんな…。

両手で持っていたコーヒーをレジに置いた。

「ポイントカードお持ちですか?」

「ないです。あ、支払いは……◯◯ぺ◯で、お願いします」

表示させて見せた。

「はい、XXX………」

これで帰ったら居なかったりして。……ハハ。それだと、本当、トイレ借りただけの人ってことじゃん。そうだ、コンビニ。……トイレなら、ここにだってあるんだし。借りればいいんだよ。わざわざ上に上がって来るっておかしいよな…。あぁ、トイレは居る間に行きたくなったのか…。やっぱり、俺にっていうか、あの部屋に用があったって感じになるのか?…。私の部屋って言ってた…。にしても解らないな。トイレは口実か?部屋に入りたいって言ってたよな。…んん?入りたいって言ったのはトイレを借りたいとはっきり言うのが恥ずかしかったからか?トイレはただタイミングの問題か……よく解んないな。ちょっと会話も成立しないし。謎っぽい、変わった人っぽい。それになんと言ってもあの、叩かれたような頬の色だよ…。グー…。あ、……腹のむしが。腹減ってる時にこの匂い…。

「あ、すいません、…からあげ、これ、ください、二つ。それと……あー、これと、これ、はい」

「はい」

……元々、住んでたことがあるとかか…?

「お客様?以上でよろしかったでしょうか」

「…あ、はい、はい、あぁ、◯◯ぺ◯で」

「はい。XXX……」

全然、話、聞いてなかったよ。他に客が居ないからってレジでボーッとし過ぎだ。

「……有り難うございました」

「あ、どうも~」

…待てよ。部屋に入りたいって、具合悪そうに…装おって…実は空き巣だったりしてな。………ん?は!?じゃあ悠長にしてる場合じゃないよな。
外に出て階段を駆け上がった。
< 4 / 54 >

この作品をシェア

pagetop