逃げる彼女に甘い彼 ~my sweetheart~
そう、世間で言うところの私もお嬢様だ。
大学を卒業するまで、そうやって育ってきた。

仕事人間の父と、浮世離れした母。
後継者と期待され教育されてきた兄。
そして、やっとの思いで出来た女の子が私。

母は日本文化よりもフランスをこよなく愛していて、小さい頃から私をフランス人形の着せ替えの
ように楽しんで育てていた。
フリフリの服を着せ、フランス語の読み聞かせをし、休みのたびにフランスへ私を連れ立って
旅行していた。
蝶よ花よで育てられた私は当然、大学を卒業したら、花嫁修行して良家と結婚という筋書きが
父や母の中にあって、それが当たり前だと思っていたのだけど。
高校時代に見たキャリアウーマンのドラマに影響されたのもあり、社会に出てみたいと主張した。
大学では経済を学び、就職活動をして今の会社に就職したのだ。

始めは父も反対していたが、兄の助言によりコネなしで就活しそれで入社出来たら許可するというものだった。
条件は都内勤務ででライバル会社でないところ。

そしてたくさん就職活動してようやく入社したのが柾木コーポレーションの傘下の子会社。
さすがに本社は無理だった。
九条コンツェルンとも友好関係な会社だったので両親から許しが出た。
今の私の居場所だ。

なので、職場には実家のことは伏せてある。一社員だ。
卒業と同時に実家を離れ一人暮らしもしている。
とはいえ、兄が一人暮らしする同じタワマンのフロア違いだ。これでようやく許可がおりた。
実家の物件で会社からも近く家賃もタダ。
OLの収入ではとても住めないところだが、働かせてもらえるならばと安全安心のこのマンション
で暮らしている。ありがたいけど。

特に家族仲が悪い訳でもなく、むしろ仲良しなんだがいくつになっても過保護なところは否定出来ない。もっとしっかりとした大人の女性ならば安心するのだろうけど。
< 14 / 213 >

この作品をシェア

pagetop