逃げる彼女に甘い彼 ~my sweetheart~
パーティーの関係者だろうか。
気を引き締めて応対する。
九条の娘というのはバレているはずだ。

目の前にいる男性は高身長でサラサラの髪をキチンとまとめて、一目でわかる高級なスーツを
着こなす、イケメンだ。
でも、初対面で笑わなくても。

ムッとして、つい言ってしまう。
「あんなに美味しそうなお料理並んでるのに、全然食べられないんですからお腹もすきます。
食べられないなら並べなきゃいいのに!
フードロスをなんだと思ってるのかしら。」

「そうだね。でしたら、ちょっと待ってて。」

フラリと出て行って、しばらくすると戻ってきた。
「はいどうぞ。女性は取りづらいよね。
好きなものあればいいけど。」

ムッとしたのが申し訳ないくらい美味しいお料理を持って来てくれた。
「ありがとうございます。いただきます。」

せっかくとってきてくださったので、一口頂いた。
「美味しい…。」思わず出てしまった。
仕事帰りで空腹で、ホントに美味しかった。

「それは良かった。パーティーなんて疲れるよね。私は苦手でね。愛想笑いで引きつるよ。
帰宅したら、いつも口角がピクピクしてる。」

おもしろおかしく話してくれる。おもわず、

「ふふ、ほんとうに。私も帰るといつもそう!」

思わず笑って同意してしまった。あっ、いけない、調子に乗った。

ニッコリ笑い返してくれて
「ゆっくり食べて。」

そう言って、爽やかに去っていった。いい人そうだな。
ムキになって失礼しちゃったな…。
その後、パーティーは無事に終わり帰宅した。
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