逃げる彼女に甘い彼 ~my sweetheart~
「いいよ。そんなに自分作らなくても。君らしくいて。」

思いがけない言葉だった。
九条の肩書きを背負っているからにはきちんと振る舞いなさいと教育されてきた。
マナー教室の先生なんかも理想的な子女とはとかいつも言われていたし。

「いえ、作っているつもりは。。。お気に障りましたか?」

恐る恐るきいてみる。

「ぜんぜん。言い方誤解させたかな?
看板背負うのは面倒だろう?自分は自分なのにって。
君はもっと自然体の方が魅力的だ。
美味しい時は美味しい。
楽しい時は楽しい。
寂しい時は寂しい。

感情を素直に持ってるのに時々抑えているように見えて。」

そういう風に人から見えてたのか。
でも、気心が知れてる人には割と大っぴらだ。

「知らず知らずにそうする様に身についてしまってるのかも。
でも、辛いわけではないんです。
家族も友人も割と大っぴらな性格を理解してくれていますし。
それに、置かれている環境も恵まれていると思ってますから。」

そう、不幸だとは少しも思わない。
誰でも表裏はあると思うから。

「そっか。なら僕ももう少し頑張らないとな。大っぴらに接してもらえるように。」

大胆な発言に、どういうつもりだろうと思う。
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