逃げる彼女に甘い彼 ~my sweetheart~
電話を切って、席へ戻るとちょうど会議を終えた桐生課長が戻って来ていた。

「課長、ちょっとよろしいですか?」

「なんですか?」いつも通り物腰の柔らか上司だ。

「フランスとの事業は円滑に進んでいますか?」

「どういう意味だ。」

「書類作成中、フランスD社の初期の頃と、現在の金額に違和感があります。
それと、フランスのライフライン事業に関わる会社で、柾木コーポレーションの企業買収の動きがあると。」

ギラっと鋭い目つきで見られた。
「どういう意味だ。どこからの情報だ。噂では何の信憑性もない。
第一、なぜ君がそんな話を持ち込む。根拠を話せ。」

「根拠って。あるところからの情報です。嘘や噂でも確認された方が。
そんなことになれば柾木全体にかかわりますよ。結果、間違いだったでもいいじゃないですか。
不安材料は消した方がいい。」

助っ人の事務員が好き勝手に言っていると思っただろう。
でも、黙って考えて、フランスに電話をかけていた。
REO社の人だろうか。
なんか、電話の様子では慌しくなってきているようだ。

「まんざら噂ではないようだ。情報収集にはいる。
フランスのD社以外に電話して動向を伺ってくれ。」

「承知しました。」

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