逃げる彼女に甘い彼 ~my sweetheart~
それから、逃げるようにお店を出て、実際に実家へ向かった。

母は最近父の接待に駆り出され気疲れしたので丁度パリに行きたいと思っていたようだった。
五日後のエアチケットが取れたので10日程の予定で二人旅をすることに。
仕事を始めて、なかなか母子でパリへ行く機会がなく、母はとても楽しみにしてくれた。


蓮さんとのやり取りを振り返る。
千歳のこと誤解してるわけでも、ヤキモチを焼くわけでもなかったなあ…。
やっぱり、九条家の娘が都合がいいのかもしれない…。
彼の本性が分からず疑心暗鬼になりそうな気持ちに蓋をした。


そんなとき、次の日タイミングよく彼から電話が。
フランスの新聞社御曹司のシャルルだ。先日大変お世話になった。

幼少期、 時折フランス好きの母が私を現地の学校へ入れた。
交流のあった、ウネ家のシャルルと出会ったのは10歳の時。
慣れない、上流子女が通う学校にゲストとして短期間で通うことになった時もシャルルは優しく
してくれた。

その後折を見て、短期間でステイをしていたが、中学生と高校生の時半年ずつスイスの全寮制で勉強することになったのだ。
きっかけはシャルルがこの学校へ在籍していたから。
世界中からこの学校には生徒が集まり国籍を超え交流がある。

私も短期間だったが、ここでフランス語や英語を学んだ。
そして、それぞれ悩みを持った子女たちが共に友情を築いた。
私と同じように短期滞在のものも、長年親元を離れ滞在していたもの、期間はバラバラだったが寮生活で色々な経験をして自由に勉学に励んだ。

そんなきっかけをくれたシャルルは信頼できる友達。
彼から久々にスイスの学校の近くで数人だけど同窓会をしようというものだった。

それは是非参加したいと申し出、10日の滞在を私は延長してスイスへ向かうことにした。

色々と凝り固まった頭を一度リセットしてみよう。
そう決めた。
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