君がいればそれだけで。
ただ、王女は自分が嫌われている事を知っている。知っているからこそ、何かあった時じゃないと町村に出向かないし兵士や召し使いにも必要最低限の言葉しか掛けない。関わりに行って不快な思いをさせたり、話し掛けた事が理由で相手が周りに避けられたりされるのが嫌だから。自分が発端となって相手を不幸にしたくないから。

「そう・・・。パル、後は頼んで良い?」

「かしこまりました」

「ありがとう。今日は雨が降るまで庭にいるわ」

「後で伺います」

王女の口元が少しだけ緩んだ。俺だけに見せてくれる表情の一つと言いたい所だが、そういう訳ではない。
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