君がいればそれだけで。
「敬語、使わなくて良いよ。苦手なんでしょう?」

「そんな、まさか」

「気にしなくて良いよ。獣の国の王にあなたを呼ぶよう頼んだの、私なの」

隣にしゃがみこんだかと思うと思わぬ告白で頭が混乱してしまった。俺は獣の国で暗殺を職としている者。国王に頼まれた時だって彼女を楽にしてやってほしいと言われてここに来たのに。
国王がいらぬ気遣いで殺そうとしていた訳じゃないのか。自分で命を絶つために呼んだって、じゃあ何で国王は自分が頼んでいるような言い方したんだ。どちらかが庇っているのか。どちらかのために。
なぜ。どうして庇う必要がある。別にこれから亡くなる者の評判なんて気にしなくても良いだろう。
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