君がいればそれだけで。
国のぎりぎりに住んでいた事もあって、よく他の種族が紛れ込んでは両親がバレないように逃がしていたのを覚えている。兵士に訪ねられた時は自分たちが追い出しているから大丈夫なんて言っていたけれど、子供だった僕でも分かる嘘だった。だって、兵士に見つかると危ないからって抜け道を教える行動が追い出しているとはならないだろう。
その中に怪我をして暫く一緒に暮らしていた父子がいたんだ。母は看護師、父は医師だった僕の家庭は怪我人を見捨てられる訳もなく完治するまで住まわせてしまった。それが仇となり、両親と父子は兵士に殺された。反逆者と見なされたんだ。
出来るなら仲良くなってしまったその子供と愛する両親と共に殺してほしかった。なのに国は僕を囚われていた可哀想な子供として保護したんだ。子供だから密告する事も脱け出す事も出来なかったのだろうと。でも、僕は違う。自分の意思で自宅にいたし、仲良くしたいから兄と慕った。
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