もうそばにいるのはやめました。


最終チェックを終えるとちょうどいい時間になった。


もうすぐエンディングが始まる。



ハルくんとともに体育館に移動した。


幕の下りたステージの真ん中にたたずむ。



「まもなくエンディングとなります。今年の体育館ステージのエンディングは、相松円くんによる……えっ?変わった?」



アナウンスにノイズが生じる。

幕の向こう側がざわつく。



「――失礼しました。今年のエンディングは相松円くんから竜宝寧音さんに変更し、バイオリンのソロ演奏をひろうします」



ざわつきが大きくなった。



「えー」

「相松くんじゃないの!?」

「円くんがいい~」

「バイオリンとか興味ねぇし」

「クラシックとかまじ?」



どうして嫌みや文句ばっかり聞こえちゃうんだろう。


手に汗をかく。

心臓がバクバクだ。


緊張と恐怖でどうにかなってしまいそう。



「姫!」


「寧音ちゃん!」



ハルくんとナツくんの声が響いた。


ステージ横で応援してくれてる2人を見据える。



……そうだ。

わたしは独りじゃない。


周りは敵だらけじゃなかった。



「好きです!」



ひと足早く開催された野外ステージのエンディングが、やけに鼓膜を揺らした。


公開告白。

気持ちを伝える企画。



……わたしにもあるよ。


あふれんばかりの「好き」。



音楽が好き。バイオリンが好き。

円の想いの分も、演奏で伝えたい。


ううん、伝えるんだ!



メンテナンスされたバイオリンも、手作りのドレスも


大好きって気持ちも



全部、わたしの味方。



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