KANATA~answers of your selection~
「奏太くん、奏太くん起きて!」


「う...うーん...」


「青葉大病院に着きましたよ!道路が混んでいて現在時刻は午後1時53分です!」


「うそっ、そんな...」


「早く行って下さい!」


「でも、松井さんは...」



松井さんがオレの瞳を見つめて深く頷いた。



「後悔したくないんでしょ?なら、さっさと行きなさい。私は車を停めたら急いで屋上へ向かうから」


「松井さん...ありがとうございます」



オレはシートベルトを外し、勢いよくドアを開けて外へと飛び出した。


今行けば間に合う。


大丈夫だ。


絶対に大丈夫だ。



「すみません、屋上に行きたいんですけど...」


「屋上へはあちらのエレベーターを使って下さい」


「ありがとうございます!」



とにかく全速力で走った。


エレベーターが来るのも待ちきれないくらい心がそわそわして落ち着かなかった。


やっと来たエレベーターに飛び乗り、Lボタンを押すとどこにも止まらないでくれと祈った。


が、しかし。


エレベーターは停止した。


扉が開くと、そこにいたのは車イスに乗ったり、点滴に繋がれている子供たちだった。


1階で一緒に乗った事務員も医者も降りる。


オレも彼らに続いて降りるしかなかった。



「ありがとうございます」


「ありがとう、お兄ちゃん」



そう笑顔で言われると憎む気になれない。


時計をちらりと見ると午後1時59分12秒。


タイムリミットまであと15分を切っていた。



「すみません、屋上へいく階段は...」


「それなら向こうの非常階段を使うといいよ。ただここから屋上までだとかなりかかるよ。次のエレベーターを待った方が...」


「大丈夫です。ありがとうございました!」



なんか見覚えのある顔をした医者だったが、今はそれどころではない。


今はまだ7階。


この建物は病棟だけでなく、老人ホームも入っているからかなり高層で、たしか50階まである。


とにかく気合いで上っていくしかない。


オレは非常階段めがけて走っていった。


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