愛してるからさようなら
私はその夜、初めて須原くんの家にお邪魔した。

1LDKで、学生の一人暮らしにしては、ゆったりとした広さのある部屋。

若い男の子の部屋らしく、モノトーンのシンプルな家具で統一されている。

私の部屋より広い。
おうちがお金持ちなのかな?

「桃香さん、お風呂入るよね。
 お湯溜めるから、ちょっと待ってて」

そう言って須原くんは浴室へ向かう。


ほんとにいいのかな。
須原くんはいい子だけど、それでもやっぱり男の子だし…


私の中で、須原くんを信じたい気持ちと完全には信じられない気持ちが交錯して帰りたくなる。

けれど、予想通りというか、予想に反してというか、須原くんはあっさりと寝室を私に明け渡し、指1本触れることなく自身はリビングのソファで眠った。


ほんとに何もしないんだ……


いや、別に何かを期待してたわけじゃない。
ただ、ずっと追われて押されてきたのに、ここでスッと引かれると、正直拍子抜けな感は否めない。
どう断ろうか思案してたのに…
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