寡黙なダディの秘めない愛情
城之内育巳、13歳。

私立有名校の中等部に通う2年生だ

家族は、父親の城之内蓮46歳と母親の美咲37歳、妹の夏美8歳の四人家族。

育巳は今、授業中に渡された白紙の原稿用紙に向き合っていた。

『゛お世話になっている人゛をテーマに作文を書きましょう。400字づめ原稿用紙に最低5枚が宿題です。どなたか一人をテーマにしてもいいし複数人でもいいです。期限は冬休み明け。忘れないように』

担任から出された国語の冬期休暇の課題。

いまや色々な家族形態がある。

母子家庭、父子家庭はもちろん、祖父母に育てられたり、施設から通っている生徒もいる。

家族や親というテーマは繊細だ。

その点、お世話になった人なら誰にでもいる。

゛無難な選択だな゛

と冷静に育巳は思った。

育巳が中学生らしからぬほどクールなのは訳がある。

幼い時から、常に父親にライバル視され、妻溺愛を隠さない蓮に、なかば呆れているからだ。

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