Ⓒランページ




キミは覚えているだろうか? あの23歳のバンドマンのことを。


あの日、キミはバンドマンと会って、ホテルに連れて行かれそうになった。そして、踵でスネを蹴って、太宰治の「走れメロス」の主人公、メロスのように走ったね?


その時、キミは街中を走っていたね? 大阪の街を全力疾走で。今でも忘れない日曜日の昼間だった。人は大勢いた。


そんな中、おかしいと思わないかい? 大勢の人がいる街中で、全力疾走なんかそう簡単にできると思うかい?


キミは「できる」と心の中で答えただろう。やろうと思えばそりゃできるかもしれない。しかし僕が聞きたいのはそこじゃないんだ。


「キミは誰にもぶつからずに駅まで走ることができたのか?」ということだ。



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