彼と彼女の甘い秘めごと
父は仕事を抜け出してきたのだろう、スーツ姿のままだった。
母はわたしと目が合って安心したように微笑むと、服部先生に挨拶をしていた。
「白石さん、調子はどうですか」
「野木先生…!」
奥から遠慮がちに現れた野木先生。
今までわたしのために奔走してくれていたのだろう、授業もあるのに申し訳なさが募る。
「紗和、大丈夫なのか?」
「………はい」
父の声が優しい。
…それは他人が居るからだ。
見え透いた優しさに、嫌悪感しかなかった。