極甘クールな芸能人幼なじみの意地悪な溺愛
「あの、ほんとに大丈夫なので!」
気持ちは嬉しいけど、同じくらい恥ずかしいし、とんでもなく迷惑をかけてしまってる。
でもほんとうは長い腕のその先でゴミに埋もれている鍵から目が離せない。
その視線に気付いたのか彼は一度立ち上がると、がばっとアウターを脱いでこっちに押し付けてきた。
「大丈夫、俺に任せて」
その厚み分、自由になった腕をぐいぐいと伸ばすから、今度はスウェットの袖がみるみる汚れていく。
「やっ、やめてください、服が……」
「服なんかどうでもいいよ」
彼が更に腕を伸ばしたその三秒後、目の前に、あの鍵が返ってきていた。
「ちょっと汚れたけど、はいこれ」
汚れたのは自分の方なのに、ごみを丁寧に払ってから返してくれた。彼の服は右側だけ、ほこりだらけ。
「あの、ありがとうございます」
体が硬いなりに頭をぐっと下げた。
男の子と目を合わせるなんて普段は無理だけど、しっかり目を見てお礼を言った。
精一杯の感謝、ちゃんと伝わったかな。
「よかった……」
その場に座り込んでしまいそうなほどほっとして鍵を胸に押し当てるとため息が漏れた。
「すごく大事なものなんだね」
素直に大きく頷いて彼の顔を見上げたら、マスクからちらりと覗いた目は、優しく微笑んでいるように見えた。