私の推しはぬこ課長~恋は育成ゲームのようにうまくいきません!~
「ああ、すっごくヤバい。だから抜かれたんだ。もしかしたらあれのせいで、ここが潰されるかもしれないな」

 やっと立ち上がったパソコンに向き合い、異常がないか確認してみる。

「おまえたちも、自分たちのパソコンを確認してくれ。その後ダブルチェックで松本にも見てもらうから、そのつもりでな!」

「お~怖っ! イヤらしい動画や画像を、松本ちゃんに見られたら、たまったもんじゃない!」

 なぜか大きな声で騒ぐ猿渡を、松本が白い目で眺めたのがわかった。最初からソリの合わないふたりゆえに、仕方ないだろうなと思いつつ、自身のパソコンを素早くチェックしていく。

「猿渡さん、今頃デリートしても無駄ですからね」

「嫌やわぁ、人妻巨乳美女団地妻不倫好きの性癖がバレる。高藤さんは大丈夫なん?」

「猿渡さんの性癖、人妻モノが中心なんですね。ちなみに僕のパソコンには仕事以外のものは、まったく入っていませんのでご心配なく。原尾さんは?」

「俺も会社の仕事しか入ってなイチゴ。松本さんに見てもらっても、全然問題ナイアガラ」

 それらの会話で、余計なものをパソコンに入れているのが猿渡だけということがわかったが、さっきから山田が一切会話に加わらないことを訝しく思い、さりげなく視線を投げかけた。

 俺と同じように、黙ってパソコンをチェックしているらしく、モニターに釘付けだった。なんらかのリアクションを引き出すべく、いきなり話しかけてみる。

「山田、それが終わったら経理に行って、上層部の領収書のチェックを頼む。とりあえず一ヶ月分ほど、さかのぼってみてくれ。誰が誰を接待したのか、書き出しを頼む」

「わかりました。日づけと場所、企業名に社員のわかる情報をすべて調べます」

 顔色を変えずに淡々としている様子は、いつもどおりと言える。コイツはそこまで面の皮が厚いヤツじゃないので、かぎりなくシロに近いだろう。

「松本と高藤は、監視カメラの破損具合を調べてくれ。まずは、ここにあるものからはじめて、出入口を最後に調べるように」

「了解。高藤はあとどれくらいで、パソコンのチェックが終わる?」

「そうですね、5分ほどで終わります」

「松本、念入りに頼むぞ。細かいところも見逃すなよ」

 俺からの命令で、嫌そうに顔を歪ませた松本。明らかすぎる嫌悪感に、思わず苦笑したときだった。

「須藤課長、おはようございます……」

 控えめな声と一緒に、デスクに置かれたコーヒ。それを目にしてから、傍らに立つ愛衣さんを見上げた。ほんの少しだけ頬を染めて俺を見る、彼女がかわいいと思ってしまうのは、やっぱり致し方ないだろうな。
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