【女の事件】続黒煙のレクイエム
第1話
アタシ・こずえは、ひろつぐの家が全滅をした事件から1年間は名古屋でバイト生活を続けていた。

アタシは、生まれてから35年間各地を転々とする暮らしを続けていたけん、ひとつの街に定住すると言うことや恋をするよろこびなんかは知らへんねん。

アタシは、今までに何回離婚と再婚を繰り返してきたのな…

よく覚えてへん…

アタシは、2011年に発生した東日本大震災による巨大津波で、当時暮らしていた鹿折(ししおり・宮城県気仙沼市)の街が焼かれけん、ふるさとをなくしていた。

アタシは、あの日から20年間各地を転々とする暮らしを続けていた。

住むところとバイトを転々とすることばかりを繰り返していたけん、やさぐれの女になっていた。

メイクもドレスもランジェリーも派手な色ばかりを好むようになった。

お酒は、アルコール度がめちゃめちゃ高いお酒ばかりを好むようになった。

そしてアタシは、36歳になった。

東日本大震災が発生したあの日から20年間、アタシは乳房(むね)の奥にできた深い傷をかかえていたので、今も苦しみ続けていた。

時は流れて…2031年7月頃のことであった。

アタシは、2030年の秋に知人から『仙台にいい働き口が見つかったけん、行ってみる?』と言われのを機に、仙台に移住していた。

仙台に移住後したアタシは、市内にあるナイトクラブやスナックバーや風俗店などを転々としてお金を稼いでいた。

アタシの人生の転機は、2031年7月7日…七夕の日におとずれた。

(仙台の七夕祭りは8月だけどね…)

場所は、市内一番町にあるアタシがホステスとして働いているマダムズバーにて…

この時、大船渡市からお越しになられた70代の男性6人のグループが来店した。

「あら、いらっしゃーい。」
「久しぶりだね。」

男性客6人のグループは、店の奥のボックス席に座った。

しばらくして、ボックス席にアタシと8人のホステスさんがやって来た。

男性客6人のグループは、大船渡市三陸町泊の漁師仲間さんたちである。

アタシは、グループの中で一番年上の82歳の男性客に水割りを作っていた。

その時であったが、男性客はアタシに『お姉ちゃんは、結婚はまだしていないのかな?』と優しい声で聞いた。

アタシは気乗りしない声で『えっ…結婚?まだなのですが…』と言うたけん、男性は『ちょうどよかった…うちの次男がまだお嫁さんがいないのだよ…40過ぎてもまだ一人身なのだよ…うちにお嫁に来てくれるかな…』と言うていた。

この時アタシは『お酒に酔おてはるけん、そんなんウソにきまってはるわ。』と思って聞き流していた。

けれど、あとになって男性客の話はホンマのことやときいついた時には、あとのまつりやったわ…

そう言うことで、アタシは三陸町泊で暮らしてはる82歳の男性の次男さん(42歳・JF職員)と再婚をすることになった。

アタシは再婚をしたけど、入籍はせえへなんだ。

2031年7月10日に、アタシは三陸町に移って、婚姻届を出さないまま結婚生活を始めた。

その時に、新たな悲劇が始まった。
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