猛獣御曹司にお嫁入り~私、今にも食べられてしまいそうです~
5.お気遣いは不要です



夕食の膳を整えお茶を淹れる。夕食自体は作ってもらったものが母屋から届けられるけれど、少しでも私もお勝手仕事をしたいので食前食後のお茶は必ず自分で淹れる。

「幾子、ただいま」

連絡通り三実さんが帰って来た。最近は週に何度かはこうして早く帰ってきてくれる。夕食を一緒に食べられる時間だ。

「三実さん、それはなんですか?」
「幾子へのプレゼントに決まっているだろう」

堂々と胸を張る三実さんは、お茶の盆を受け取り、代わりにプレゼントの包みを手渡してくる。

「夏物のワンピースだ」

期待した目をしているので、包みを開ける。ノースリーブのブルーのワンピースが出てきた。これは可愛い。夏のおでかけにぴったりだ。

「気に入ったか?」
「はい、三実さん」
「じゃあ、早速着てみせてくれ」

そう言うと思ってました……。
お夕飯が冷めるとかいろいろ言葉を考えたけれど、期待に満ちた目でわくわく待っている三実さんを見たら言葉が出なくなった。

「ちょっと待っててくださいね」

私はやむなくワンピースを持って脱衣所に引っ込んだ。
ワンピースはジャストサイズだ。若者向けの可愛いデザインだけど、上品で柔らかい印象に見える。三実さんはこういうものをはずさない。
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