猛獣御曹司にお嫁入り~私、今にも食べられてしまいそうです~
「三実には後継者がいるしね」

そう言ってもそもそと食事をしている信士くんの頭を撫でて見せる。

「私と三実、婚約していたときはすごく若くて。お互いを思いやることができなかったのね。でも今ならきっとお互いを思いやれると思うのよ。……この子の存在もある」

息苦しい。身体の重心がどこにあるのかわからない。ふらふらする。
私にもわかる。志信さんは私を追い出そうとしているのだ。三実さんと寄りを戻そうと東京へ戻ってきたのだ。私みたいな世間知らずそうな若い女なら丸め込んで離婚させられると思っているのだ。

三実さんの実子を盾に。

信士くんの顔を見ると、余計胸が苦しくなった。三実さんに似ているかと言われればわからない。面差しは志信さんに似ている。お母さんと違って覇気の薄そうな物静かな雰囲気だけど。

「私から、三実によく話しておくから」

まるで妻気取りな言い方だと、ようやく嫌な気分が湧いてきた。
だけど、口にはしない。彼女が怖いのではない。信士くんの前のこの話を続けてはいけないと思ったし、三実さんの言葉を聞いてからにしたいと思った。

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