極上パイロットが愛妻にご所望です
 バスタオル一枚巻いただけで、桜宮さんの前に出るのは恥ずかしくて、もう一度ワンピースを着ようか迷った。

 あまりバージンのような反応をしていると、呆れられそうだと、自分を叱(しっ)咤(た)して、スリッパに足を入れてバスルームを出た。

 リビングで桜宮さんはソファに横たわり目を閉じていた。

 昼寝をしたとはいえ、ロングフライトは疲れるよね。一番の重責を担う機長だし。

 そんな彼を癒してあげたいと思う。

 私が癒せる?

 そんなおごりは爪の先ほどもないけれど、素直になって桜宮さんが、私といて居心地がいいと思ってもらえたらいい。

 ソファの少し前で立ち止まっていた私は、勇気をかき集めて彼に歩を進めた。

 寝てはいなかったようで、気配に桜宮さんは目を開ける。

「砂羽」

 笑みを浮かべて私の名前を呼び、上体を起こし立ち上がる。

 彼はまだTシャツとデニム姿。私は無防備なバスタオル一枚で心許ない。視線を落とした私を彼は引き寄せて抱きしめる。

 甘くキスが落とされ、先ほど通った廊下の手前の部屋へ連れていかれる。そこが桜宮さんの寝室だった。

「ごめん。俺、余裕ないわ。今すぐ砂羽が欲しい」

 私の頬に手のひらが当てられ、引き寄せられる。再び唇が塞がれ、上唇と下唇を代わる代わる食むようにキスされていく。

< 128 / 276 >

この作品をシェア

pagetop