秘書清水が見た、冷徹社長の初恋
「久しぶりだな」

一瞬、出るかどうしようか迷った。
久しぶりに見る名前が、スマートフォンに表示されていた。
相手は、大学の頃付き合いのあった先輩の、春日剛だった。彼は自動車会社の御曹司で、今は確か重役に就いていたはずだ。


学年は違えどウマが合う彼とは、大学時代、親しくしていた。来る者拒まず去る者追わずな女性関係は感心できなかったものの、それ以外の面では尊敬していた。

自分の知る限り、大学時代、本当の意味で彼と親しくしていたのは、ごくわずかな人間だ。女装癖のある男と、自分だけだったと思う。
ちなみに、その女装癖のある男は、今ではすっかり〝癖〟ではなくなっているはずだ。もともと優秀な人で、卒業後はジュエリーショップを立ち上げ、今ではそこそこ名が知られるほどになっている。


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