ナナ
そういえば湊都には私の彼氏制度の話してないんだっけ・・・。



湊都はここに来てから1度もセックスをしたことがない。



いつもって言ってもまだ2回目だけど私を散々イかせて終わる。



その事になにか意味があるのかはわからない。



聞いたところで多分何も答えてはくれないんだろうし。



ベッドの上でぐったりする私とは対称的に余裕な顔でタバコをふかす湊都。



何とか起き上がり湊都の背中に手を触れる。



「なんだよ。」



私が起き上がれたことに対してなのか怪訝そうな顔をする。



「やっぱり素敵だなって思って。」



虎を指でなぞりそのまま龍をなぞる。



「くすぐってぇーよ。」


「あれ、こんなのあったっけ?」


「あ?」


「これ、刺傷みたいな・・・。」


「あぁ。最近できた傷だな。」


「大丈夫なの?殴り合いでもした?」


「ヤクザなんてそんなもんだ。」



気にせずタバコをふかす湊都。



ヤクザという仕事の恐ろしさ。



湊都の立場。



湊都の背中に残る刺傷は見るだけでも痛々しくて。



湊都はいつ死んでもおかしくないような世界にいるということを
思い知らされる。



私たちの世界とは違う。



いつ殺されたっておかしくないんだ。



「・・・気をつけてね?」


「心配してくれんのか?」


「・・・まぁ。」


「気にすんな。俺は死なねぇよ。」



心配そうな顔をしていたのか母親が子供をあやすかのように頭に
手を置かれる。



「お前はまだ休んでろ。」



身支度を整え私の頭に軽くキスを落とし足早に部屋を去ってしま
った。



次いつ来れるか分からない。



次いつ会えるか分からない。



もう会えるかも分からない。



そんな人。



背中の刺青に触れていた感触がまだ残ってる。



候補者5人。



ごめんね、翔。



候補者は2人になったわ。
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