ナナ
「菜月・・・。」



この間と同じ女が目の前に現れる。



「なんでまだこの女といるの?」


「菜月、後で話そう。」


「嫌よ。この女にも責任があるでしょう。」


「ナナは関係ない。」


「私の前で他の女の名前を気安く呼ばないでよ!」


「菜月、落ち着け。」


「落ち着け?!馬鹿なこと言わないでよ!婚約者が目の前で堂々と浮気してるのよ?!」


「言ったはずだぞ。婚約は破棄しよう、と。」


「認められるわけないでしょ?!」



ヒートアップしていく口論。



集まる視線。



静まっていく会場。



下がっていく熱気。



困惑。



怒り。



呆れ。



様々な感情が会場を満たす。



「全部この女が悪いんじゃない!」


「ナナは悪くないって言ってるだろ?!」



収まる気配のない口論に苛立ってくる。



「私を巻き込まないでよ!」



思いっきり叫ぶと翔も翔の許嫁も黙り込んだ。



「つまらない喧嘩に私を巻き込まないでよ。」



会場の雰囲気はさらに最悪になった。



踵を返し会場の出口へと向かう。



「ナナ!」


「お願いだからもう放っておいて。」



歩をゆるめることなく出口へ向かいながら言い捨てる。



「ほら言った。どうせその程度の女なんでしょ?」


「嫌な女ね。ちゃんと教育しときなさいよ。」



静まり返る会場にそう言い残し出口の扉を開けた。
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