鴉と白骨は、寂しがり屋の魔女に恋をする



   ☆☆☆




 「は、伴侶って………何を言っているの?」
 

 赤髪の男、リアムに問いかける言葉は、震えていた。
 彼の考えが全くわからなかったからだ。
 伴侶というのは、結婚するのだというのは空澄にもわかる。だが、どうして、見ず知らずの魔王と結婚するという話しになるのかがわからなかった。

 すると、乾いた笑いを見せたリアムは、小馬鹿にしたように空澄に言った。


 「おまえは本当に何も知らないんだな」
 「…………あなたは何を知っているの?」
 「おまえの知らない事だよ。魔女と魔王が結婚すると、お互いに魔力を分け与える事ができるんだ。おまえの魔力を0にして、おまえの魔力を全部貰う。そうすることで、俺の魔力が今までの限界以上に付与される。しかも、純血の魔女の魔力となればその力は格段に上がるだろう?」
 「そんな………」
 「それが俺の願いだ」


 リアムの説明に、空澄は絶句した。
 そんな話しは聞いたことがなかった。夫婦になれば魔力の譲渡が可能。しかも、相手の魔力をプラスした魔力を使えることになるのだ。そう考えると純血同士が結婚をした両親はとても強い力があったのだろうと考えられる。
 純血が狙われる理由が、ここにもあったと空澄は背筋が凍る思いをした。


 「本当は無理矢理奪うのは好きじゃないんだが、俺もそろそろ我慢の限界なんだよ。幼馴染みの体をもう使えないしな」
 「…………え…………」

 
 彼の呟きが耳に入る。
 それは、信じられない言葉だった。空澄は体が固まり、視線だけでリアムを見つめた。
 すると、リアムはまた面白そうに微笑み、腕を組むと得意気に話し始めた。


 「まだ、気づいてないんだな」
 「ねぇ……幼馴染みって璃真の事でしょ?体は使えないって………」
 「おまえの幼馴染みは10年前に死んでるんだよ。1度………な」



 少しずつ自分が知らなかった事を知り始めている。そんな実感を感じながらも、空澄は真実を知るのが怖くて仕方がなかった。


 
  

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