鴉と白骨は、寂しがり屋の魔女に恋をする


 「それでもし襲われたりしたら、割ればその魔力を吸収して魔法を使えるようにしておく。だから、呪文は覚えておけ」
 「暗記は得意分野だ」
 「………自分が死ぬのを普通みたいに言うなよ。おまえが死んだら寂しいだろ」
 「……………ごめん、希海」


 璃真の返事を聞いて満足したのか、彼は膨れっ面のままソファに戻り、横になって目を瞑った。ふて寝をしまったようだ。

 だが、最後の言葉は実に希海らしかった。
 そっけない雰囲気を持ちながらも、男相手に「寂しい」と自分の気持ちを言える。それはなかなか出来ないことだ。
 だからこそ、希海は空澄に似ていると思ったし、恋人になるのだなと思った。

 悔しくないわけはない。
 空澄を置いて死にたくないし、他の男にも取られたくない。
 けれど、恋人になって本当に死んだら、彼女はどんなに悲しむだろうか。今のままよりも孤独を感じるはずだと思った。
 それに、振られるのが怖い。そんな弱い自分もいた。

 きっと彼なら告白してしまうのだろう。
 そう思い、希海は苦笑した。
 やはり、希海には敵わない。生き続けられたとしても………


 「鴉の呪いがとけても、空澄には言わないでくれよ。もちろん、俺がもし死んだ後も」
 「……それは約束出来ないから、ちゃんと見とけ」


 目を瞑ったまま冷たく答える希海を見て、璃真はまた笑ってしまったのだった。



< 150 / 173 >

この作品をシェア

pagetop