鴉と白骨は、寂しがり屋の魔女に恋をする



 真っ黒な軍服を着た、銀髪の男だった。
 身長は希海より低めだが、堂々とした雰囲気があるからか、大きく感じてしまう。
 鋭い視線で希海を睨み付けていた。


 「あなたは誰ですか。何故、この家に入れている?」
 「その軍服は警察の魔王か。犬がどんな用件だ」


 希海が腕を組んで笑みを浮かべながらそう言うと、軍服の男は更に苛立った表情に変わった。


 「………その瞳………わかりました。魔女の使い魔。呪いの鴉の、黒鍵家の者ですね。やっと呪いが解けたとは、おめでとうございます。大変でしたね」


 見下すようにクスクスと笑う軍服の男に、希海は内心では激怒していたが、ここで喧嘩しても意味がない。男の言葉はグッと飲み込んで、冷静に対応する事にした。
 この男がここに来た理由を知る必要があったのだ。


 「さすがは警察さん。すぐにわかるとはお見それしました」
 「この結界はいつもより強くなっていますね。………花里の魔力が使われてる。やはり彼女は魔女になったのですね」
 「やはり犬は鼻が利くな。……その通り、彼女は魔力を使った。けれど、魔女になるかはまだ決めてないんだ。決まったら、警察にお邪魔するさ」


 軍服の男の話で、ここに来た目的がわかった。空澄が魔女になったかを確かめに来たのだろう。純血の魔女が誕生すれば、魔女達の間では問題にもなるはずだ。
 希海は男を見据えたまま、心の中でため息をついた。


 「………そうですか。純血として立派に育つといいですね。………それまで無事だったら、ですど」


 冷たくそう言い捨てた軍服の男は、冷えきった笑みを見せた後、すぐに背を向けてその場から帰っていった。
 希海はその姿を見送り、足音が聞こえなくなるまで玄関で男が立っていた場所を強い視線で見つめ続けた。


 「あいつは俺が守る。………だから、ずっとここに居たんだ」


 誰の耳に入る事のない言葉をもらし、希海は力強く手を握りしめた。
 言葉通り、彼女を守りきると誓いながら………。





 
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