鴉と白骨は、寂しがり屋の魔女に恋をする




 「ん………あぁ……起きたのか」


 しばらくすると、希海が目を覚ました。
 寝起きの顔も、いつものように穏やかだった。


 「うん………その……好きなだけ泣いて、勝手に寝ちゃうなんて、ごめんね。もしかして、しがみついたまま離さなかった?」
 「まぁ、そうだな。だから、仕方なく一緒に寝た」
 「そっか………ありがとう、希海。それに、魔力の譲渡もしてなかったし。疲れたでしょ?」
 「いや、今日は大丈夫だ」


 そう言って、彼は苦笑した後、いつものように顔を近づける。「大丈夫」と言っても、やっぱりキスはするのか、と思わず目を瞑る。
 すると、唇にいつもの濡れた感触はなく、その変わりに目の下に冷たいぬるりとした感覚を感じた。


 「ぇ………ちょっと、今………もしかして、舐めた……………?」


 自分がまた泣いてしまっていた事。そして、彼がその涙を舐めた事。その両方に驚き声を上げる。狼狽してしまう空澄に希海は優しく微笑んだ。


 「涙は魔力の元だからな。いくら泣いてもいいぞ。それは俺の力になるから」
 「………何それ……普通だったらただのいじめっこみたいだよ」
 「我慢してほしくないだけだ。泣いた後はまた普通になっていくさ。ゆっくりな……」
 

 思いきり泣いて、悲しんで、少しずつ笑えばいい。
 彼の言葉は、そんな風に思えて空澄は少しだけ微笑む事が出来たのだった。



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