凪いだ青を待ってる
名刺にはお仕事に関するであろう携帯番号と
手書きで記された電話番号のふたつが記されていた。
ご丁寧に「こっちにお願いします!」と書いてある。きれいで読みやすくて、品を感じさせる字だった。
『もしもし』
「あ、すみませんわたし、笹森ちさきという者ですが…」
『っちさきさん!?あっ…うそ、ほんと、どうしよ、わぁっ』
「…あの、青葉先輩のお姉さんのあやめさんでしょうか…?」
『そうですそうです!私藤枝あやめです、名刺見て電話してくれたんだね、ありがとう…っ』
「いえ、っ待ってるって言ってくださってたのに、遅くなってすみませんでした――…」
あやめさんとても明るい声で、わたしからの電話をとても喜んでくれているのだと分かって。
…そして途中から声を時折詰まらせていた。ごめんね、と言いながら鼻をすするのが聞こえる。……泣いているのだと、分かった。