凪いだ青を待ってる



「いいか。県内で手術を受けて復帰できる可能性は、ありえないって言われているんだぞ。現実は甘くない。辛いこともたくさんあるだろう」

「はい」

「次に膝に何かあったときには、もう県内では手に負えないと言われている。問答無用で東京行きだ。そういう状態で復帰を目指そうとしていることも、よく覚えておいてほしい」

「…はい」

「…。まぁ俺と母さんの息子なら、“ありえない”って言われたら覆したくなるわなぁ」

「ふふっ、本当そうね」



お父さまが笑って、お母さまも笑って。

あやめさんは泣いていた。あかりちゃんはそんなあやめさんとしっかりと手をつないでいた。


青葉先輩もまた、目に涙があって。




「頑張れ、青葉。死に物狂いで頑張って、また立花の1番としてコートを翔けるんだ」

「っ…父さん、」

「ねぇ青葉。あなたの周りは本当に素敵な人ばかりで、母さん嬉しくてたまらない。待っている人がいてくれる幸せを噛みしめながら、ひたすら頑張るしかないわよ」

「母さん…っ」

「青葉、頑張れ…っ。あんたすぐ無理するし抱え込むし心配だけど、これからはちゃんと仲間と一緒に上を目指していってね…っ。頑張れ…っ!!」

「あおちゃん、がーんばれっ!!」

「あやめ、あかり…っ。――…みんな、ありがとう…!!」



あたたかくやさしい家族の愛が、広がっていた――…。

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