凪いだ青を待ってる
春の夕刻は、不思議なきらめきを連れてくると思う。
体育館の窓から射し込む夕日がとてつもなくきれいで、…同時にもうすぐ今日が終わってしまうんだなと、唯一の切なさにも駆られている気がした。
「ちさき、さっき話してたオリエンテーションの件なんだけど」
「っはい!」
「あっ、ごめん。びっくりした?」
「大丈夫です。…ちょっとあの、夕日を…見てまして」
「ははっ、ロマンチックなこと言うねぇ」
練習が終わり、部員たちがクールダウンと片付けに向けた準備を始めた頃。
…夕日を見つめてしまっていたわたしは慌てて我に返る。
紙を持って立っていたのは、男子バレー部のコーチでありわたしの担任でもある阿部先生だった。