凪いだ青を待ってる
「ちさきー、暇やったらいつでも電話してくれてええんやで?暇やなくても電話してくれてええんや……いでっ!!」
「南雲、早く行かないと置いて行かれるぞ」
「藤枝ァ!おまえ叩き方がなっとらんねん、こうやなくてこうやってな……」
「あーはいはい、早く帰れ」
「あははっ!」
夕日が沈みかけた頃、糸島大付属のバスを見送るために並ぶ。
…いっちゃんはギリギリまでわたしに話しかけてくれて、見かねた青葉先輩に流されていた。それを見て笑ってしまった気持ちは、弾むように楽しい。
「藤枝!6月!決勝で待っとるからな!」
「それは俺の台詞だ」
「途中で負けたらしばいたるからな!覚えときっ!」
「それも俺の台詞だ」
――…次、公式戦で会えるのは6月上旬の県大会。
夏の全国大会、「インターハイ」の県代表決定戦だ。
「ほな、またなーっ!」
「いっちゃん、元気でねーっ!」
勝負の夏に向けて、出来ることを全力でやろう。
角を曲がり切るまで窓から身を乗り出して
手を振ってくれたいっちゃんの姿を見つめながら、強く思った。